サスティナビリティ学 -地球と共に生きる-
単位数 | ナンバリングコード |
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2 | DCS106 |
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教員名 | 横山 隆 |
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専門 | 建築材料学、建築環境学 |
出身校等 | 北海道大学大学院 工学研究科建築工学専攻構造材料専修修士 スウェーデン王国国立シャルマース工科大学 土木工学部建設 材料講座 Licentiatexamen取得(Half Doctor Degree) |
現職 | 最高裁判所専門委員(建築、札幌地方裁判所所属)、最高裁判所司法委員(建築、札幌簡易裁判所所属) |
授業形態 |
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前期印刷授業・後期印刷授業 |
授業範囲 |
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教科書の内容すべて・学習用プリントの内容すべて |
試験範囲 |
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教科書の内容すべて・学習用プリントの内容すべて
(持ち込み許可物)一切自由 (試験に関する注意事項)科目試験は、インターネット試験で実施します。 |
科目の概要 |
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レイチェルカールソンが「沈黙の春」(1962年),ローマクラブが人類の危機レポートとして「成長の限界」(1972年)を発刊して以来,環境問題が地球全体に影響を及ぼす喫緊の課題として認識されて久しい。
現代に於いては,環境問題を克服して環境的(エコロジカル)持続可能性を追求し,さらに経済的持続可能性や社会的持続可能性を併せてバランス良く実現させていく持続可能な発展(Sustainable Development)と言う概念で解決に向けた方向性が示されている。 サステイナブル・デベロップメント(持続可能な発展)は,ブルントラント委員会で「将来の世代が自らのニーズを満たすための能力を損なうことなく,現在世代のニーズを満たすような発展」と定義づけられ(1987),世代間衡平,南北社会間衡平,生物多様性への配慮等の諸要素を広く包含し,持続可能な発展への課題解決を目指したサスティナビリティ学へと概念的に進化してきている。 また、2015年9月、国際連合で開催された「持続可能な発展サミット」では、2030年までに達成すべき17の持続可能な発展目標SDGs(Sustainable Development Goals)と169項目の具体的ターゲット(達成基準)が193の加盟国によって全会一致で採択されている。 しかし、現実の諸問題はその背景やメカニズムを含め,非常に多くの要素が複雑に絡み合ったものであり,正確に問題の所在を理解し,課題解決に向けた対策を打つことは容易ではない。細分化され専門分野に深化し、要素還元主義を前提に構築されてきた単体の既存科学・技術領域のみの努力では,実践的解決能力を失ってしまっている。様々な情報や視座,相反する選択肢が混在する中で主観的な判断が求められる状況下にあるが,地球や自然,人間や地域社会の成り立ちにまで根ざした知識や思考力,問題の実態を把握する直感力,そして何よりも過去や他の事例を学びつつ解決を目指す熱い想いが,全人類の直面する諸課題に対する実践的解決能力に結びつく事は間違いない。 そもそもサスティナビリティ学というものが1つの学問・科学分野として成立するのか議論が続いているのも事実である。諸説はあるが,これがサスティナビリティ学で,この方法論がサスティナビリティ学の本質であるとは明快に提示されておらず,共通認識にもなっていない。概念的な大きな枠組みとして示されているのみである。 しかし,現象が複雑で個別科学の領域を逸脱している地球規模の課題から地域的な課題まで取り扱う実践的解決能力を今ほど求められている時代は無い。我々ひとりひとりが地球とともに生きるため,実践的課題解決を通じて自分自身のサスティナビリティ学を組み上げることが重要であり,未来世代への責務でもあることを学んでいきたい。 発展的学習として、最近話題になっている「人新生*1の資本論」(著者:斎藤幸平 集英社新書)に示された「気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るであろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。」と言う危機感と、著者が描きだした「晩期マルクスの思想の中に眠っていたヒントから構想した豊かな未来社会への具体的な道筋」を吟味しながら理解する力も身につけていきたい。 *1「人新生」:人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代。ここ数十年の地質年代区分として提唱されている。 |
授業における学修の到達目標 |
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2011年3月11日に発生した東日本大震災以来,それまでのエネルギーへの見方,政策,そして我々のライフスタイル,人生観そのものまでが問われている。有限の地球に於いて,原子力発電やエネルギー問題はどのように考えられ,最優先に考えられなければならない事は何か?この社会の成長の果てには何が見えてくるのか?将来世代にわたる幸せはどうすれば実現できるのか?と問われている。
教科書「生物多様性とは何か」と「エネルギーを選びなおす」に示された,厳しい現実社会の有様と、その課題解決に実践的に向き合う著者たちの思考を辿ることにより,課題解決手法としてのサスティナビリティ学の概念と思考の方法(方向性と幅)を追体験し,課題と解決策を認識して自分自身の意見を纏める力をつけることを目標とする。 |
講義の方針・計画 |
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第1回:サスティナビリティとは(学習用プリント集)
成長の限界と持続可能な発展I(学習用プリント集) 第2回:成長の限界と持続可能な発展II(学習用プリント集) 第3回:成長の限界と持続可能な発展Ⅲ(学習用プリント集) 脱成長社会への転換は可能か(人新生の資本論の吟味) 教科書「生物多様性とは何か」 第4回:はじめに~第1章 生物が支える人の暮らし 1 敗れて分かる命のネットワーク~3 生物多様性の経済学 第5回:第2章 生命史上最大の危機 1 増える「レッドリスト」~4 里山-日本の生物多様性保全の鍵 第6回:第3章 世界のホットスポットを歩く 1 ホットスポットとは~6 日本人が知らない日本 第7回:第4章 保護から再生へ 1 漁民が作った海洋保護区~5 自然は復元できるか 第8回:第5章 利益を分け合う 1 生物多様性条約への道のり~2 ビジネスと生物多様性 第9回:終章 自然との関係を取り戻す 教科書「エネルギーを選びなおす」 第10回:はじめに~第Ⅰ章 エネルギー渉猟文明 1 石油と電気漬けの社会~2 迫り来る崖 第11回:第Ⅱ章 機能不全のエネルギー・システム 1 代替エネルギーの構想~2 ポスト3.11エネルギー論争 第12回:第Ⅱ章 機能不全のエネルギー・システム 3 循環なきバイオマスの失敗~4 賢いエネルギー利用とは 第13回:第Ⅲ章 自然エネルギーを使いこなす社会へ 1 コミュニティーエネルギー 第14回:第Ⅲ章 自然エネルギーを使いこなす社会へ 2 主役は地域 第15回:第Ⅲ章 自然エネルギーを使いこなす社会へ 3 ダウンサイジングとシェアの思想 おわりに-プラグを抜く時 |
準備学習 |
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印刷授業は、教科書や学習用プリントなどを基に自学自習で学習を進めますが、授業範囲の内容の他に、教科書の内容全体を2単位で90時間かけて学習することを目安としています。
わからない用語や内容は、参考文献等で検索することが準備学習として必要になります。 |
課題(試験やレポート等)に対するフィードバック方法 |
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印刷授業は、提出されたレポートについて講評を付与して返却する。 |
成績評価の方法およびその基準 |
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試験:100% |
教科書 |
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書 名:生物多様性とは何か(初版)
著者名:井田徹治 発行所:岩波書店 ISBN:9784004312574 書 名:エネルギーを選びなおす(初版) 著者名:小沢祥司 発行所:岩波書店 ISBN:9784004314516 |
参考書 |
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書 名:人新生の資本論
著者名:斎藤幸平 発行所:集英社「集英社新書」 |
その他 |
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なし |
試験期間 |
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シラバス検索画面トップページ(https://syllabus-tsushin.do-johodai.ac.jp/)下部の「2022科目試験時間割」を参照 |
学習プリント |
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あり |
教職科目 |
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関連受講科目 |
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なし |
担当教員の実務経験 |
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2006年度から2010年度の5年間、企業の環境管理責任者として企業活動により生ずる環境負荷を低減させるための実践活動を統括した。ISO9001(品質管理),ISO14001(環境管理)の取得および維持管理実務を指揮した。2011年度から2016年度の6年間は、国立総合大学に全国で初めて設置されたサスティナブルキャンパス推進本部特任准教授・プロジェクトマネージャーとして、2万2千人を超える構成員を擁する大学の教育研究活動により生ずる環境負荷を低減させるための実践活動を統括し、2015年度には大学運営への貢献が認められ北海道大学総長賞を受賞した。
また、2013年度、全国の研究教育機関の環境負荷低減活動の連携を図るため、CAS-Net Japan(キャンパスサスティナビリティ・ネットワーク)の立ち上げに参画し、現在も顧問を務めている。 これらの実践活動を通じて得られた知見をもとに、地球規模の課題から地域的な課題まで取り扱う実践的解決能力の必要性やこれを獲得する術を学生に伝え、我々ひとりひとりが,課題解決を通じて自分自身のサスティナビリティ学を組み上げることが重要であり未来世代への責務でもあること、そして自らが自らの力で未来社会を構想することが切に求められていることを教育する。 |